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第9回エッセイ – キューパーツについて。



キューがツーピース仕様になったことで、

製作の自由度は、飛躍的に上がった

今回は、キューを構成する「パーツ」についてお話しします。

キューは元々、シャフトとバットの区別がない1本の棒(ワンピース)で、1820年代後半から今のような、シャフトとバットをジョイントでつなぐツーピース仕様になりました。

ワンピースですと当然、キュー先からキュー尻までの素材(木)はすべて同じです。

ですからたとえば、メイプルでワンピースのキューを作る場合、メイプルそのものが他の木と比べて軽いため、キューの後部を重くすることができません。

一方でツーピースは、いろんな木を使うこと(組み合わせること)ができますし、キューのバランスを前や後ろにすることもできます。

つまり、キューがツーピース仕様になったことで、製作の自由度は、飛躍的に上がりました。

また、ハギのないバットが、ワンピース・キューのように硬くなりやすいのに対して、バットをハギのような組み木で作ると、素材同士がバネのように緩衝して撞いた感じが柔らかくなりますし、デザインの自由度も上がります。

そうした理由もあって、バットをハギで作ることが主流になっていったのですが、とはいえ組み木をするのにも限界はあります。

たとえば32剣ハギも、できないことはありません。

でも、接合部分が多くなるほどバット全体は弱くなりますから、それだけ複雑に組むと撞いた時に腰折れして、道具としての性能は下がってしまうおそれがあります。

それからすると、8剣ハギぐらいまでが適当だと思います。

その後、バットはフォアアーム部、グリップ部、スリーブリング部のスリーピース構造で作られるようになりました。

それによって、それぞれをつなぐボルトの位置や重さを変えることでキューそのもののバランスを細かく変えられるなど、チューンナップしやすくなり、自由度もさらに上がりました。

ところでキャロム・ビリヤードのキューには、糸巻きがないノーラップのグリップや竹の子ハギのキューが多いです。

それは、キャロム・ビリヤードのキューは、より頑丈である必要があり、そのためにバットをスリーピースではなく、芯になる木をワンピースと同じような構造で作っているためなのです。

ジョイントの役割は、

単にバットとシャフトをつなぐだけではない

このようにキューは、進化し続けていますが、その一端を担ったのがジョイントです。

キューのパーツのなかでは目立たないですが、しかしとても重要で、ジョイントの性能が良くないと、デザイン的にどれだけそのキューに見惚れたとしても、プレイヤーとしては使うことが難しいのではないかと思います。

そしてそのことをキューメーカーもわかっているからこそ、世界中で新型ジョイントが開発されているのです。

昔、「ジョイント作りで苦労するぐらいなら、ジョイントを作らなければいい」と考えて、新しいタイプのキューが発売されました。

「スリークォーター・キュー」といって、全体の3/4がシャフトで残りがバットというキューでしたが、それを使った時に初めて「ジョイントの役割は、単にバットとシャフトをつなぐだけではない」ということがわかりました。

ショット時にキューは、ジョイント部分で若干「ギュッ」とたわみ、それによってよりヒネリが効きます。

でも、そのスリークォーター・キューはジョイントがないために、たわみませんから、ヒネリの効きが弱かったのです。

撞いた感触も、竹の棒をコンクリートに転がした時の「カランッ」っていう感じでした。

私が最初に使ったキューのジョイントは、真鍮製でした。

今から40年くらい前の話ですが、ホームセンターでも売られているネジを代用したもので、精度が低くてネジに隙間がありましたから、止め終わるまでカチャカチャと音がしました。

長く使っていると錆びることもあって、見た目にもキレイではありませんでした。

それを2年ぐらい使った後は、雄ネジも雌ネジも木で作られたウッドジョイントのキューを使いました。

シャフトに雄ネジがあるもので精度が高かったですから、キャロム・ビリヤードのプレイヤーの多くが使うようになりました。

ウッドジョイント仕様のポケット・ビリヤードのキューも作られましたが、昔はプレーキューでブレイク・ショットをしていましたから、ウッドジョイントですと下手すると折れてしまいます。

ですからポケット・ビリヤードでは、真鍮製やその後に出たステンレスなどの金属のジョイントが受け入れられていきました。

ただ、ジョイントカラーまでがステンレスですと、どうしてもキュー全体のバランスが前になります。

キューの前方が重いと撞く時にキューがおじぎしやすく、押しが効きにくくなりますから、特にキャロム・ビリヤードでは好まれにくいのですが、それを解決したのがプラスティックでした。

有機合成化学の研究が進み、金属と同じくらいの強度があるプラスティックができたことで、バランスがよくしっかりとしたキューが作られるようになったのです。

また、ジョイントカラーは昔、圧縮した紙で作られたこともありました。

タップの下に敷く「座」と同じようにです。

湿度が高いとふやけた状態になるため、耐久性に問題がありましたが、結構長い間使われていました。

先角を「コツ」と呼ぶ人がいるのは、

骨類を付けたことが由来

ところで、今から200年近く前のタップができた当初は、タップをキューの先端に直接付けていました。

でもそれでは、撞いているうちに木がささくれだったたり、真っ二つに割れたりします。

そこで、キュー先の保護のために骨類を付けるようになりました。

それが先角(さきづの)の始まりで、今も先角を「コツ」と呼ぶ人がいますが、それは骨類を付けたことが由来です。

最初は象牙で、その他ではクジラやシャチの歯、鹿の角などが使われました。

私がビリヤードを覚えたころも、主流はシャチでした。

でも骨類は、乾燥に弱くて割れることがありました。

それに、音や感触は象牙が優れていましたが、高価ですし、世界的に象の捕獲が禁止されたこともあって、先角の素材には、今のようにプラスティックが使われるようになりました。

先角は撞いた時の感触に影響を与えます。

私が設定したタップの反発時間よりも遅く反発させるものもありますし、タップの性能を殺してしまうこともあります。

ただ、比較的安く簡単に交換できることも先角の特徴です。

ですから、付いている先角が好みに合わなければ、リペア業者に交換してもらうといいと思います。

ちなみにキャロム・ビリヤードでは、先角交換は割とよく行われています。

ポケット・ビリヤードの先角の長さは2.5センチぐらいですが、キャロム・ビリヤードは大体1センチ以下です。

小さいうえに、キャロム・ビリヤードは先角に一番パワーがかかる競技ですから、痛みやすく、シャフトの寿命がくる前に壊れてしまうことも少なくありません。

感触の違いを正確に伝えるのは、言葉や文字では難しい反面、

ボールを撞けばすぐに理解できる

先角もジョイントも、ショット時の感触に関わるパーツですが、感覚は人それぞれで、だからこそ好みが異なります。

撞いた感触一つをとっても「コッ」「コツッ」「コツンッ」「コツーンッ」とあります。

そしてその感触の違いを正確に伝えるのは、言葉や文字では難しい反面、ボールを撞けばすぐに理解できます。

仮に、撞いた感触がいいキューがあるとします。

それがどんな感触か、どう良いかを友達に伝える時には、言葉ではなく、キューを渡して撞いてもらえば「なあ、いいだろ?」「うん、いいね」で話は終わります。

知識や経験を共有していれば、話をしなくても感覚を伝え合うことができるのだと思います。

道具には、気に入ったデザインのものを使う喜びや、単に使うことの楽しさもあります。

でも、それだけではありません。

キューがツーピース仕様になったことで、

製作の自由度は、飛躍的に上がった

今回は、キューを構成する「パーツ」についてお話しします。

キューは元々、シャフトとバットの区別がない1本の棒(ワンピース)で、1820年代後半から今のような、シャフトとバットをジョイントでつなぐツーピース仕様になりました。

ワンピースですと当然、キュー先からキュー尻までの素材(木)はすべて同じです。

ですからたとえば、メイプルでワンピースのキューを作る場合、メイプルそのものが他の木と比べて軽いため、キューの後部を重くすることができません。

一方でツーピースは、いろんな木を使うこと(組み合わせること)ができますし、キューのバランスを前や後ろにすることもできます。

つまり、キューがツーピース仕様になったことで、製作の自由度は、飛躍的に上がりました。

また、ハギのないバットが、ワンピース・キューのように硬くなりやすいのに対して、バットをハギのような組み木で作ると、素材同士がバネのように緩衝して撞いた感じが柔らかくなりますし、デザインの自由度も上がります。

そうした理由もあって、バットをハギで作ることが主流になっていったのですが、とはいえ組み木をするのにも限界はあります。

たとえば32剣ハギも、できないことはありません。

でも、接合部分が多くなるほどバット全体は弱くなりますから、それだけ複雑に組むと撞いた時に腰折れして、道具としての性能は下がってしまうおそれがあります。

それからすると、8剣ハギぐらいまでが適当だと思います。

その後、バットはフォアアーム部、グリップ部、スリーブリング部のスリーピース構造で作られるようになりました。

それによって、それぞれをつなぐボルトの位置や重さを変えることでキューそのもののバランスを細かく変えられるなど、チューンナップしやすくなり、自由度もさらに上がりました。

ところでキャロム・ビリヤードのキューには、糸巻きがないノーラップのグリップや竹の子ハギのキューが多いです。

それは、キャロム・ビリヤードのキューは、より頑丈である必要があり、そのためにバットをスリーピースではなく、芯になる木をワンピースと同じような構造で作っているためなのです。

ジョイントの役割は、

単にバットとシャフトをつなぐだけではない

このようにキューは、進化し続けていますが、その一端を担ったのがジョイントです。

キューのパーツのなかでは目立たないですが、しかしとても重要で、ジョイントの性能が良くないと、デザイン的にどれだけそのキューに見惚れたとしても、プレイヤーとしては使うことが難しいのではないかと思います。

そしてそのことをキューメーカーもわかっているからこそ、世界中で新型ジョイントが開発されているのです。

昔、「ジョイント作りで苦労するぐらいなら、ジョイントを作らなければいい」と考えて、新しいタイプのキューが発売されました。

「スリークォーター・キュー」といって、全体の3/4がシャフトで残りがバットというキューでしたが、それを使った時に初めて「ジョイントの役割は、単にバットとシャフトをつなぐだけではない」ということがわかりました。

ショット時にキューは、ジョイント部分で若干「ギュッ」とたわみ、それによってよりヒネリが効きます。

でも、そのスリークォーター・キューはジョイントがないために、たわみませんから、ヒネリの効きが弱かったのです。

撞いた感触も、竹の棒をコンクリートに転がした時の「カランッ」っていう感じでした。

私が最初に使ったキューのジョイントは、真鍮製でした。

今から40年くらい前の話ですが、ホームセンターでも売られているネジを代用したもので、精度が低くてネジに隙間がありましたから、止め終わるまでカチャカチャと音がしました。

長く使っていると錆びることもあって、見た目にもキレイではありませんでした。

それを2年ぐらい使った後は、雄ネジも雌ネジも木で作られたウッドジョイントのキューを使いました。

シャフトに雄ネジがあるもので精度が高かったですから、キャロム・ビリヤードのプレイヤーの多くが使うようになりました。

ウッドジョイント仕様のポケット・ビリヤードのキューも作られましたが、昔はプレーキューでブレイク・ショットをしていましたから、ウッドジョイントですと下手すると折れてしまいます。

ですからポケット・ビリヤードでは、真鍮製やその後に出たステンレスなどの金属のジョイントが受け入れられていきました。

ただ、ジョイントカラーまでがステンレスですと、どうしてもキュー全体のバランスが前になります。

キューの前方が重いと撞く時にキューがおじぎしやすく、押しが効きにくくなりますから、特にキャロム・ビリヤードでは好まれにくいのですが、それを解決したのがプラスティックでした。

有機合成化学の研究が進み、金属と同じくらいの強度があるプラスティックができたことで、バランスがよくしっかりとしたキューが作られるようになったのです。

また、ジョイントカラーは昔、圧縮した紙で作られたこともありました。

タップの下に敷く「座」と同じようにです。

湿度が高いとふやけた状態になるため、耐久性に問題がありましたが、結構長い間使われていました。

先角を「コツ」と呼ぶ人がいるのは、

骨類を付けたことが由来

ところで、今から200年近く前のタップができた当初は、タップをキューの先端に直接付けていました。

でもそれでは、撞いているうちに木がささくれだったたり、真っ二つに割れたりします。

そこで、キュー先の保護のために骨類を付けるようになりました。

それが先角(さきづの)の始まりで、今も先角を「コツ」と呼ぶ人がいますが、それは骨類を付けたことが由来です。

最初は象牙で、その他ではクジラやシャチの歯、鹿の角などが使われました。

私がビリヤードを覚えたころも、主流はシャチでした。

でも骨類は、乾燥に弱くて割れることがありました。

それに、音や感触は象牙が優れていましたが、高価ですし、世界的に象の捕獲が禁止されたこともあって、先角の素材には、今のようにプラスティックが使われるようになりました。

先角は撞いた時の感触に影響を与えます。

私が設定したタップの反発時間よりも遅く反発させるものもありますし、タップの性能を殺してしまうこともあります。

ただ、比較的安く簡単に交換できることも先角の特徴です。

ですから、付いている先角が好みに合わなければ、リペア業者に交換してもらうといいと思います。

ちなみにキャロム・ビリヤードでは、先角交換は割とよく行われています。

ポケット・ビリヤードの先角の長さは2.5センチぐらいですが、キャロム・ビリヤードは大体1センチ以下です。

小さいうえに、キャロム・ビリヤードは先角に一番パワーがかかる競技ですから、痛みやすく、シャフトの寿命がくる前に壊れてしまうことも少なくありません。

感触の違いを正確に伝えるのは、言葉や文字では難しい反面、

ボールを撞けばすぐに理解できる

先角もジョイントも、ショット時の感触に関わるパーツですが、感覚は人それぞれで、だからこそ好みが異なります。

撞いた感触一つをとっても「コッ」「コツッ」「コツンッ」「コツーンッ」とあります。

そしてその感触の違いを正確に伝えるのは、言葉や文字では難しい反面、ボールを撞けばすぐに理解できます。

仮に、撞いた感触がいいキューがあるとします。

それがどんな感触か、どう良いかを友達に伝える時には、言葉ではなく、キューを渡して撞いてもらえば「なあ、いいだろ?」「うん、いいね」で話は終わります。

知識や経験を共有していれば、話をしなくても感覚を伝え合うことができるのだと思います。

道具には、気に入ったデザインのものを使う喜びや、単に使うことの楽しさもあります。

でも、それだけではありません。

性能面でとても大事な、肌なり骨なりで感じるバイブレーションやショック——その感覚を人と共有することもまた、道具の楽しみ方なのではないかと思います。

第8回エッセイ – テーブルについて。

(当時は)テーブルというとほとんどが日本製で、

使われるパーツもほぼ純国産

今回は、前回のボールと並んでビリヤードをプレーするうえでなくてはならない道具である「テーブル」についてお話しします。

今でこそ外国製のテーブルでプレーすることが当たり前になっていますが、40年くらい前まではテーブルというと、キャロム・ビリヤードもポケット・ビリヤードもほとんどが日本製で、使われるパーツもほぼ純国産でした。

たとえば、ラシャの下にある石(スレート)。

これは粘板岩といって硯の材料にも使われるものですが、国産のスレートは品質が高く、厚くて頑丈で、その後に輸入されるイタリア製のスレートよりも、身がつまっていたように思います。

ラシャもニッケか水文の国産品でした。

今でもこの2社はラシャを製造していますが、当時は材料がウールで今と比べるとモサモサしていて、コンディションが重く、ボールが走りませんでした。

そうした国産パーツを乗せる“船造り”を手がけていたのが日勝亭や淡路亭で、その船の名前はポケット・ビリヤードでいうと「ガリオン」。

アメリカ製のブランズウィックと比べても立てつけが良く、構造を見てもしっかりしていたと思います。

一方、キャロム・ビリヤードのテーブルには決まった名称がなく、日本玉台や淡路亭などのテーブル製造会社のエンブレムがつけられていただけでした。

また、当時のテーブルには、今のようにヒーターはついていませんでした。

外国製のテーブルを知っている人が「同じようにヒーターをつけたい」といって、オプションでテーブルの下にヒーターをつけたのを見たことはありましたが。

その後、円高やビリヤード・ブームが手伝って外国製のテーブルが入って来たのですが、その前に「グラニート」というスペイン製のキャロム・ビリヤード用のラシャが入ってきました。

これは、薄くて転がりが良く、それまでのコンディションとまったく異なったため、少しの間みんなが驚き、戸惑いましたが、すぐにこぞって使うようになりました。

そのため、世界的にもグラニートが主流になると思われていました。

ヨーロッパ製のテーブルに対して戸惑ったが、

使い慣れていくうちにいろんなことができるようになった

ところが、今の『ワールドカップシリーズ』のような大会が開催されることになったときに、いち早く「ラシャを提供する」と名乗りを挙げた会社がありました。

それが、フランスの「イワン・シモニス」。

それからは、世界的に一気にシモニスのラシャが主流になったのです。

そのころからテーブル自体も外国製が輸入されるようになって、ポケット・ビリヤードではアメリカ製の「ブランズウィック」。

キャロム・ビリヤードでは「シェビロット」「バンラーレ」「フルホーブン」「ソレンソガード」といったヨーロッパ製のテーブルが、国内の多くのビリヤード場に並ぶようになりました。

最初は、ヨーロッパ製のテーブルに対して戸惑ったものですが、使い慣れていくうちにいろんなことができるようになって、実際に当てやすさも感じられました。

また、世界のキャロム・ビリヤードの中心はヨーロッパでしたから、国際大会には当然ヨーロッパ製のテーブルが採用されます。

そのため次第に日本でも「これしかない」と、ヨーロッパ製のテーブルを使うことが主流になり、プレーするようになりました。

朝から球を撞くというときは、

ボールを前の日からテーブルの上に置いておいた

Temp Stock Image

当時のヨーロッパ製のテーブルの特徴は、もちろん今でもそうですが、堅牢だったこと。

このことはキャロム・ビリヤードのテーブルにおいては、とても大事なことです。

キャロム・ビリヤードはボールが大きくて重く、それが二重回しだとかでグルグル動き回りますし、ハードショットも要求されます。

言うなればポケット・ビリヤードに比べてキャロム・ビリヤードは、テーブルにかかる力が大きいのです。

そのため、テーブル自体が弱いとテーブルが揺れ、テーブルが揺れるとボールが滑走せず、パワーロスしてスピンを途中で使い果たしてしまいます。

それでは、長い距離を引いたり、スピンをできるだけ長い時間残したりすることができないのです。

つまり、テーブルが弱いとプレーに支障をきたします。

ほとんどのキャロム・テーブルに鉄骨が入っていてスレートも厚く、総重量が約1.2トンもあるのは、そのためなのです。

また、ヨーロッパ製のテーブルが輸入された当初から既に、テーブルにはヒーターがついていましたが、その役目は乾燥させるためです。

たとえば逆のヒネリが効いた状態のボールがクッションに対して鋭角に入ると、クッションから出た後にボールは、出てきたクッションに戻るようにカーブします。

でも、クッションが湿気ていると、そのカーブが出ないのです。

そういうことを防ぐためにヒーターがついているのですが、ヒーターを主に乾燥のために使っているのは、日本特有のことです。

ヨーロッパは気候的に元々乾燥していることが多いですから、テーブルを乾燥させる必要はあまりありません。

それなのに、日本ではホワーッと効かせる程度なのに対して、ヨーロッパでは結構、熱いぐらいまでヒーターを効かせます。

では、なぜヒーターをつけたかというと、元々の理由はボールを温めるためです。

ボールは温かいと柔らかく、寒いと硬くなります。

それによってボールの反発も変わるのですが、ヨーロッパは寒いところが多いからボールが冷えやすいのです。

ですからいつも同じように反発させるために、ヒーターをつけたのです。

私も昔、朝から球を撞くというときは、ボールを前の日からテーブルの上に置いておきました。

ヒーターは一日中つけっぱなしで消すことはありませんから、テーブルの上に置いておけばボールが温まるのを待たずに、来てすぐに撞けます。

ボールの上も下も満遍なく温めるために、ボールの上から蓋をかぶせたこともありました。

スリークッションは、

精密さが要求される測量に近いゲーム

近年でもテーブルメーカーは開発を続けていて、ニューモデルを発表しています。

その構造を見ると、力の分散のさせ方などを構造力学や建築学に基づいて緻密に計算して設計していることがわかり、感動します。

実際テーブルの精度が上がったことでスリークッションでは、得点できる形がどんどん増えてきました。

昔なら「それは狙える球じゃない」といわれるような球も今ではイージーに取れるようになりましたし、走りが足りなくて「惜しい」なんていうことは、少なくなりました。

スリークッションは、精密さが要求される測量に近いゲームです。

ですからテーブルの精度がダイレクトにプレーに影響するし、競技する側も見る側も、そこを楽しんでいるともいえます。

一方でポケット・ビリヤードは、テーブルが良くなったからといって、それによって出しの幅が広くなったり、より高度なことができるようになったりしたかというと、スリークッションほどではないように思います。

ナインボールでいえば、当然テーブルの精度が高いに越したことはありませんが、それを利用してプレーされることは少なく、むしろ刻々と難しくなってくるコンディションの中で見られる、意外性のあるプレーが魅力だと思います。

もちろん、「マスワリ連発」のような洗練されたプレーを見るのもワクワクするものですが。

エッセイ:毛利の独り言    第7回「ボールについて」

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バンキングで勝ったプレイヤーは

必ずといっていいほど白球を選び、相手に黄球を撞かせた

今回は、ビリヤードをプレーするうえでなくてはならない道具「ボール」についてお話しします。

今のキャロムボールには白、黄、赤(的球)の3色が使われていますが、30年くらい前までの手球は両方とも白でした。

その片方には3ミリぐらいの黒のドットがあって、それを「黒球」、もう一方を「白球」と呼んで区別していました。

ところが、トーナメントともなるとお客さんの位置からでは、どっちが白球でどっちが黒球なのかが試合中に時々、わからなくなることがありました。

そこで見た目にわかりやすくしようと、黒球から今の黄球に変更されたのですが、黄球に変わった当初はプレイヤーの間で、白球と比べて黄球のほうが「表面にチョークが残りやすい」「コースが詰まりやすい」といった話が出ました。

真偽のほどは定かではありませんが。

ボールというのは、実は2層構造になっていて、基材である硬質プラスティックの外側が薄くコーティングされているのですが、黄球を作る場合、硬質プラスティックには、顔料が混ぜ込まれます。

つまり、微妙とはいえ白球とは材質が異なるわけで、それが原因だったのかもしれません。

当時はバンキングで勝ったプレイヤーが先攻・後攻を選ぶだけでなく、ボールの色も選択していたのですが、そうした理由で少しの間、バンキングで勝ったプレイヤーは必ずといっていいほど白球を選び、相手に黄球を撞かせていました。

予想するにそうした話を受けてボールメーカーのアラミス社が研究を進めたところ、ボールを黄色にすると表面が弱くなるとか、何らかの欠点がわかり、改良したのではないでしょうか。

しばらくして、白球も黄球もほとんど状態が変わらなくなったのです。

しかも、それまでは使ってるうちに表面のコーティング部分にひび割れが起きることがありましたが、それも見られないようになりました。

白球・黒球の時代の精度は、当時の最高技術で作られていたとはいえ、今と比べると幼稚なもの。

そこから今のように堅牢で精度の高いものにしたアラミス社の技術はすごいと思いますし、黙っていても売れていく商品でありながら黄球を改良したように、常に研究していいものを作り続けようとしている姿勢は、尊敬に値すると思います。

9がいくつも並ぶ世界一の真球体であることが

科学的な検査によって証明された

その後に作られたのが、今ではすっかりお馴染みになった、表面に赤いドットが入った「ドットボール」。

スリークッションを見る際に手球のスピンがわかりやすいようにと、キャロム・ビリヤード界が考案したのです。

ドットボールの作り方は、6つのドットがボールの表面に均等にできるように、ドットとなる赤い棒を組み合わせて骨格を作り、それを液状のプラスティックに浸けて固めます。

そしてその固まりを研磨して丸くしているのです。

つまりドットボールは、多少なりとも成分が違うものを合わせて作られています。

そのため、穴を掘ってドットを埋めたり、あとから接着していないとはいえ、普通に考えると均一に作ることは難しいです。

でも以前にテレビで見ましたが、真球度(球体の丸さの精度)が一定以上ある球体の中で最も小さいものは、精密機械に使われるベアリングの球。

その逆に最も大きい球体がビリヤードのボールで、その真球度はほぼ100%。

99.99……と9がいくつも並ぶ世界一の真球体であることが、科学的な検査によって証明されていました。

アラミス社にはそれだけの技術があるということで、我々が不都合なく正確にプレーできているのは、その精度の高さのおかげです。

ポケット・ビリヤードでは他社のボールも使われていますが、キャロム・ビリヤードではアラミス社のボールが大多数を占めており、それも頷ける話だと思います。

重いと感じるのは

単純な重さの違いではなく感覚的なもの

ただ個人的には、ドットボールが出た当初は「気持ち悪い」と思いました(笑)。

たとえばファイブ&ハーフの空クッションを撞く場合、その撞点は体で覚えています。

でもドットがあると、なんだか「ここを撞け!」と指図されているように思いました。

撞点を測量する時にも、若干ドットが邪魔になったこともありました。

また、普通の手球とドットボールでは、「ドットボールのほうが重い」という話もありました。

確かに、絵の具は色によって質量が異なりますし、同じ赤でも有機顔料と無機顔料を使ったものとでは、やはり質量が違います。

それからすると、普通の手球よりもドットボールのほうが重たくなったとしても、おかしくはないと思います。

でもアラミス社なら、その差はごくわずかなものに抑えているでしょうし、反発計数だとかいろいろなテストをクリアしたものだけが世に出ているはずです。

ですから、重いと感じるのは単純な重さの違いではなくて、感覚的なものではないかと思います。

ボール同士が当たると、90度に近いラインで弾けます。

でもその弾け方が今までと違って「割れない」と感じられたなら、それによって「手球が重い」と感じられてもおかしくはありません。

もっと単純なことをいえば、ボールは使えば使うほど、ラシャとの摩擦や拭き掃除によってすり減ります。

その状態の手球と新しく買ってきたドットボールとを比べれば、それはもちろん新しいドットボールのほうが重いです。

つまり、本来の重さに戻っただけのことで、それによって重いと感じられたのかもしれません。

ちなみにボール掃除には昔、銅や真鍮の錆を落とすための研磨剤が使われていました。

でもそれだとボールが削られてどんどん小さくなっていったので、車や家具用のワックスが使われるようになりました。

今ではそれらのほか、アラミス社のボール用ワックスも広く使われています。

単に球体を扱うことに面白さを感じて

だからこそ大勢の人が熱心にプレーしている

世界にはいろいろ球技があって、多くの人に親しまれています。

それは、それぞれに面白さがあるからでしょうが、その大元ですべてに共通しているのは「ボールを扱う」ということです。

ボールは、根元的に人を面白がらせる魔力を秘めています。

赤ん坊や幼児は、たとえその意味がわからなくても、または上手にできなくても、ボールを転がすだけで楽しいと感じて喜びます。

あるいは河原で見つけた丸い石を宝物にしたり、水晶の玉が神秘的に感じられたりもします。

そうした感覚と同じで、つまりその球技のどこがどう面白いということではなく、単に球体を扱うことに面白さを感じて、だからこそ大勢の人が熱心にプレーしているのではないかと思います。

それはビリヤードも同じだと思います。

スリークッションやナインボールが面白いということではなくて、地球上で最も真球度の高いボールを扱えるという喜びがあって、そしてそれだけのものをデリケートにコントロールするところに、実はみんな面白さを感じているのではないでしょうか。

ボールをクッションに向かって撞くだけでも十分楽しいはずですし、始めたころはそれだけでワクワクしたことでしょう。

撞いた時の感触や音を感じるだけで嬉しいという人も、少なくないと思います。

ですからジュニアでもシニアでも、初心者にビリヤードを教える場合には、得点の仕方だとかを教える前に、まずはそういう面白さから伝えると興味を持ちやすいし、普及していくように思います。

キャリアが増えて技術や勝負だけに目が向いてしまうと、根元にある「球と付き合うことの楽しさ」を忘れてしまいます。

得点できないとか上達しないとかで思い悩むことが多い人は、今一度その原点に戻ってみてはいかがでしょうか。

2015年 8月9日 Written by. Hideo Moori

第6回エッセイ -毛利の独り言 「チョークについて」

雪道では、普通の革靴よりも

スパイクのある革靴のほうが滑りにくい

今回は、ボールを撞くときに欠かすことのできないアイテムである「チョーク」についてお話しします。

タップが出現する前のキューというのは、単に先端が丸くなっただけの木の棒でした。

そのためボールの中心しか撞くことができなかったのですが、19世紀始めの頃、イギリスのとある港で荷受けをしていた人たちが、試しに木箱などの積み荷に行き先を記すために使っていた白墨の粉をキューの先端に塗ってみました。

すると、少しヒネることができるようになったのです。


それ以来、プレーの質などが格段に向上したわけですが、ヒネリがイギリスで生まれたということで、ヒネリのことを「イングリッシュ」と呼ぶようになりました。

つまりチョークの原点は白墨で、炭酸カルシウムなどの基材に、タップへのノリを良くする研磨剤や顔料などを加えて成形したものなのです。

ちなみに、「チョークの成分が含まれているためにブルー系のタップは青い」という話を耳にすることがありますが、それは正しくありません。

本エッセイの第2回でもお話ししましたが、ブルー系の革はクローム鞣しによって作られていて、その鞣し方をすると革は、青みがかったグレーに仕上がります。

それに顔料をまぶすことで、ブルー系のタップは青くなっているのです。

では、チョークを塗るとなぜヒネることができるのでしょうか。

それは、研磨剤がスパイク粒子となって、ボールを掴んでいるためです。

雪道では、普通の革靴よりもスパイクのある革靴のほうが滑りにくいですね。

それと同じことです。

そのためチョークは、撞くたびにボールの表面にスパイクの傷を作っています。

粒子が細かいために肉眼では傷を見ることはできませんが、ボールの寿命を決めているのは、チョークであるともいえるのです。

もちろんタップに関しても、チョークが塗られるたびに削られています。 

「同じタップでどれだけチョークの違いが出るか」を知るために、

同じ設定で同じ撞点を撞くテストもした

チョークの性能を決めるのは、スパイク粒子の細かさです。

塗ったときにサラサラするか、ヌルッとするかという、ヤスリでいうところの番手の細かさが各社で若干異なります。

昔の「ナショナル・トーナメント・チョーク」はシカゴで製造されていたため、通称「ナショナル・シカゴ」といわれていたのですが、これは「幻の名品」といわれ、数千円出してでも「ほしい」という人も少なくありませんでした。

ポケット・ビリヤードでは、パッケージが茶色の通称「茶ブラ」をはじめとする、古い「ブランズウィック」のチョークがベストという人も多いです。

その他にもいろいろなチョークがあって、今でも100銘柄以上はあるのではないでしょうか。

ちなみに、今一般的に多く使われている「マスター」が少しパラッとした感じがするのに対して、昔のチョークはねっとりとして粒子が細かい傾向がありました。

タップの開発時には「同じタップでどれだけチョークの違いが出るか」を知るために、代表的な銘柄であるナショナル・トーナメント・チョーク、ブランズウィック、マスター、そして「トライアングル」の4つを使って、同じ設定で同じ撞点を撞くテストもしました。

その他にも数十種類のチョークを使ったことがありますが、そうした経験からいうと「ボールを傷めすぎない」「汚しすぎない」「食い付きがいい」といったトータルバランスで見れば、その4銘柄には大差がないと思いますし、それらのどれかを使うので十分だと思います。

もちろん、ボールに対する食い付きの良さでいえば、その4銘柄よりも「名品」といわれるものなどのほうがいいと思います。

でもその反面、「ボールが汚れやすい」「少しねっとりしすぎてる」といった短所もあって、たとえ名品といわれるものであっても、まさに「完璧」といえるものを見るまでには至っていません。

それであれば、入手しづらかったり値段が高かったりするものをあえて選ぶことはなく、その4銘柄のどれかを使うので十分だと思います。 

撞いたときにタップの繊維がぶつっと切られて

表面が根こそぎ削られてしまう

ビリヤード場にはほとんどの場合、チョークが用意されています。

多くの人がそれを使い、問題なくプレーできている思いますが、それでもマイチョークを持つほうがよいと思います。

チョークの塗り方には、人それぞれで違いがあります。

そしてそれによってチョークの表面の形状にも、お椀型や「+」模様など、個性が出るのですが、自分と違う塗り方でできた形状の場合、意外ときれいに塗りづらいものなのです。

また、たとえば長年マスターを使っている人がいるとします。

マスターはおそらく一番ポピュラーなチョークだと思いますが、とはいえどのお店にも必ずあるわけではありません。

そのため、もしマイチョークがなければ、マスターとは違う銘柄のチョークを使わざるを得ないこともあるでしょう。

チョークの成分の配合比率は、メーカーごとに若干異なります。

つまり、普段と違うチョークを使うということは、粒子が違うもの同士をタップの表面で混ぜ合わせるということになり、それだとそのチョークが持っている個性を消してしまいますし、タップにも良くないのです。

要は「チョークは混ぜるな」ということです。

その点でもマイチョークを持ったほうがいいと思いますし、もし違うチョークを使う場合には、タップに付いたチョークを拭き取ってから使うのがいいと思います。

また、チョークを使うときに注意すべき点があります。

ボールの表面にはワックスが塗られていて、ボールを撞くとそれがタップに付着します。

その状態でチョークを塗ると、タップに付いたワックスがチョークにも移動し、その結果、タップとチョークの両方にワックスが付いた状態になります。

その状態ではいくらチョークを塗ったとしても、チョークとタップの間でワックスをキャッチボールするだけになってしまいますから、撞いたときにタップが滑りやすく、ミスする確率も高いのです。

チョークにワックスが付くと、表面がてかって見えます。

そうした状態になったらティッシュで拭き取ってリセットしましょう。

それともう一つ。

チョークのノリが悪いからといって、タップにヤスリをかけて表面を毛羽立たせることも良くありません。

ミクロレベルの話になりますが、ヤスリをかけて起こした毛の間にチョークのスパイク粒子があると、ボールを撞いたときにタップの繊維がぶつっと切られて表面が根こそぎ削られてしまい、ミスが起きるのです。

端の撞点を使ったときに特に起きがちなミスですので、注意してください。 

一緒にプレーする人やお店のことを考えて

チョークを選び、マナーを守って使う

チョークは、ビリヤードをプレーするうえでの必需品ですが、一方でボールやテーブルを汚します。

ですから、ノリの良さという点では、前述の代表的な4銘柄を上回るものもありますが、そうしたチョークを使う際には注意する必要があります。

スパイク粒子が鋭すぎると、チョークの粉がラシャに散った場合に拭き取れなくなることもありますし、特にポケット・ビリヤードでは交代で同じボールを撞きますから、相手にボールを汚しすぎるチョークを使われると困るはずです。

自分が撞こうと思ったところにチョークがべっとりと付いていたら、そこはもう撞けないですからね。

将来的には、チョークに代わるものが発明されるかもしれません。

吹き付けるとさっと乾く、粘着性のあるスプレーなどですね。

でもチョークを塗る仕草は、ビリヤードをよく知らない人にさえ「ビリヤードのイメージ」として通用するように、文化としても定着していると思います。

ですから、チョークの代替品ができるのは、まだまだ先の話でしょう。

これからもチョークを使い続ける以上は、一緒にプレーする人やお店のことを考えてチョークを選び、マナーを守って使うことが大事です。

テーブルなどの道具はみんなの共有物ですし、元よりビリヤードは、「ハスラー」なんていう言葉とは程遠い、気品のある遊びでもあったのですから。

2015年 2月14日 Written by. Hideo Moori

第5回エッセイ -毛利の独り言 「シャフトについて」

シャフトの寿命が尽きるときというのは、
ジョイント部分の摩耗による故障が大半

今回は、キューの「シャフト」についてお話しします。

良いシャフトとは何か――。

その答えは人によって若干違いますが、「白い」「木目の素性が良い」「しっかりとしている」の三拍子がそろったものを求めている方が多いのではないでしょうか。

特に白には、「清涼」「清潔」「新しい」というイメージもありますから、白いシャフトを使っているとそれだけで気持ちがいいと思います。

白いシャフトの素材は、木の外側です。

この部分は、早い話がまだ生きていて、温度や湿度の変化に応じて曲がりが出ることがあります。

ですから、シャフトを作る際には、曲がりが出ないようにしっかりと乾燥させてから使っているのです。

一方で、「芯材」といわれる木の内側は、少し色づいていて、白さという面では外側に劣ります。

でも、実が詰まっていますから、それ以上育つことはありません。

ですから、見た目としてはよくないと思うかもしれませんが、実は少し色づいているシャフトのほうが、芯材を使っているため、曲がりなどの狂いが起きにくいのです。

また、「シャフトは、いつまでも白いままでいることはない。ということは変化し続けている安定していないもの」と考えて、「それならば、これ以上汚れることがない『真っ黒なシャフト』のほうが安定しているはず」という方もいます。

それはそれで合理的な考え方だと思いますし、そこまで極端ではないにしても「キューは汚れてナンボ」と考える方も少なくないようです。

でも個人的には、シャフトが汚れていることを好ましくは思いませんので、新品の状態は保てないまでも、自分の許容範囲内の白さを保つように掃除をしています。

シャフトの掃除にサンドペーパーを使う方がいます。

でも、サンドペーパーでは木が削れてしまい、シャフトのコンディションも変化し、ひいては寿命もあっという間に縮まってしまいます。

シャフトの寿命が尽きるときというのは、保管が悪くて曲がることを除けば、ジョイント部分の摩耗による故障が大半です。

先角は、割れたとしても交換することができますから、ジョイント部分で摩耗やガタが起きない限りは、元よりシャフトは、かなり長持ちするものなのです。

それなのに、サンドペーパーを使って自分から寿命を縮めることはないと思います。

シャフトの掃除に使っているのは、消しゴムです。

カスが丸まるものとかいろいろな消しゴムを試してみましたが、砂消しゴムを除いてごく普通のものならどれでも大丈夫です。

木を削ることはないし、チョークの粉や手垢が取れますからオススメです。

ただし、消しゴムのカスでビリヤード場を汚さないようにご注意ください。

上級者は、撞いたときの音で、

いつもと違う撞き方をしたかどうかがわかる

白さを保ちたい理由は、「きれいなシャフトを使いたい」ということだけではありません。

上級者ともなれば頭のなかに膨大なプレー・イメージがインプットされているもので、「この配置はこうやって取る」というように、自然とその時々の映像(配置)に頭や体が反応してプレーしています。

「これはこの前の球と似た球だから、似た撞き方をすればいい」というようにです。

実際、毎回イチから取り方などを考えてプレーしていては、プロレベルの試合で勝つことはなかなか難しいと思います。

つまり裏を返せば、見た目の映像がいつも同じであれば、精度やアベレージも上がるということです。

もちろん配置は毎回違いますから、当然いつも同じ映像というわけにはいきません。

でも、構えたときの視界に手球とシャフト(キュー先)があるのは、いつも同じです。

そしてそのときに、ある程度同じ白さのシャフトが常に見えるか、あるいは青かったり黒かったりと日によって違う色のシャフトが見えるかでは、アベレージに差が出るのではないかと思います。

上級者は、撞いたときの音で、いつもと違う撞き方をしたかどうかがわかります。

そうした五感のインプットというのは大事で、それと同じ理由で常に自分なりの白さを保っているのです。

ヨーロッパの古い神殿にある柱のように

「エンタシス」があることが特徴

テーパーにも人それぞれの好みが表れますが、基本的には売られているそのままのテーパーを信用して使うのがいいと思います。

ポケット・ビリヤードなら「ストレート・テーパー」。

キャロム・ビリヤードなら“神様”レイモンド・クールマンスが発案の「クールマンス・テーパー」の名残をとどめた中太りのテーパーです。

これらは長い間、キューメーカーとプロ選手が意見をかわしたり、テストしたりした末に生み出されたものですから間違いないと思います。

クールマンス・テーパーは、30年くらい前に流行ったテーパーです。

ヨーロッパの古い神殿にある柱のように「エンタシス(※)」があることが特徴といえます。

シャフトの中央部が太く、先端部からの力や衝撃に強いですから、ボールの端を撞いたときにもシャフトが変に曲がることなく、しっかりと撞くことができるのです。

クールマンス・テーパーが流行る前は、ボークラインやカードルといった細やかさを競うゲームが主流でしたので、当時の先角の径は細かい球を撞くために細く、11ミリぐらいでした。

先角が太いと、どこを撞いているのかわからなくなってしまうためです。

それに当時は、キューを2、3本の指で握って、手首を使って撞くプレイヤーが多かったですから、テーパーは今のポケット・ビリヤード用のシャフトのようなストレートだったのです。

その後、今のようにスリークッションがメインゲームになったのですが、それまでと同じく先角やテーパーが細いとスリークッションを撞くのには、パワーや硬さが足りません。

そこでクールマンスは、細い部分に肉づけしてエンタシスをもたせた、クールマンス・テーパーを考案したのだと思います。

50年後には、キューに合成素材やリサイクルが可能な素材を

使わざるを得なくなる

さて、積層タップのように、シャフトにも張り合わせたり人工物を組み入れたりして作られた、「ハイテクシャフト」というものがあります。

ハイテクシャフトの特徴は、反発力の強さです。

たとえるなら、棒高跳びの棒が竹からグラスファイバーなどに変わって大幅に記録が伸びたようなもので、パワーや回転力が増して楽にキューを効かせることができるようになりました。

そういう意味では進化した道具といえ、ヒット商品になっているのも頷けます。

ただ、弊社でも革という生ものを接着していますのでわかりますが、膨張率は物質ごとに異なります。

ですから、かなり精密に作られているとはいえ、樹脂などの人工物と木を完璧に張り合わせることは簡単ではないと思います。

これは、木と木を張り合わせるにしても同じです。

革と同様に、この世にまったく同じ木というのは存在しませんから、半永久的に張り合わせの間に隙間ができないとは、断言できないのではないかと思います。

張り合わせという考え方は素晴らしいと思いますし、性能もかなり高いです。

でも安定性という点では、素材が木では、生ものであるだけに極限まで高めるのは難しいと思います。

ですから素材は木ではなく、圧縮した紙や変化しにくく手に引っかかりにくい人工物を使うほうが、安定性・均一性が保てるのではないかと個人的には思います。

古来より人間は、木の温かみを感じながら生活してきました。

木や木目がない家に住むのには抵抗がありますし、それはキューに関しても同じです。

ハイテクといわれるようになっても尚、木を求め、使っています。

でもこれからは、今まで以上に森林を守っていかなければなりません。

ですから50年後には、キューに合成素材やリサイクルが可能な素材を使わざるを得なくなると思います。

「昔はシャフトは木でさ……」と懐かしみながら。

その点でいうと、今のハイテクシャフトは研究途上といえます。

本当の意味で完成するのはまだ先で、人工素材が一般でも普通に使われるその世界であれば、※※人工素材のハイテクシャフトもまた受け入れられるのではないかと思います。

※エンタシス……上にいくにつれて細くなる円柱の中ほどにつけられたふくらみ。巨大建築物の柱にみられることが多く、
法隆寺東院伽藍廻廊やパルテノン神殿が有名


2014年 12月13日 Written by. Hideo Moori


第4回エッセイ – 毛利の独り言

道具の選び方について


単に硬いだけでは
ヒネリを効かせたときにプレーが淡泊になりがち

今回は、ビリヤードにおける「道具選び」についてお話しします。

キューの「バット」と「シャフト」のそれぞれで「硬い」「中ぐらい」「柔らかい」の3つの硬さがあるとすると、全部で9種類の組み合わせが考えられます。

木のたわみが手元で起きない「硬いバット+中ぐらいのシャフト」というものや、逆に手元がたわむ「柔らかいバット+硬いシャフト」というようにです。

初めて自分のキューを選ぶときは別として、キューを選ぶときには、バットのデザインだけをみるのでなく、これらの組み合わせのなかで自分に合っているものを探すことが、本当のキュー選びなのではないかと思います。

 キャロム・ビリヤードでは、バットにしてもシャフトにしても、ふにゃふにゃした柔らかいものが使われることはほとんどありません。

キャロム・ビリヤードは、ポケット・ビリヤードに比べてボールは重たく、ハード・ショットを要されることも多いです。

そのためキューには、構造的にも材質的にも硬くてしっかりしたものが求められ、「硬いバット+硬いシャフト」という組み合わせが選ばれることが多いのです。

でも、単に硬いだけですと、ヒネリを効かせたときにプレーが淡泊になりがちです。キャロム・ビリヤードのプレイヤーのなかには、グリップにゴムを巻く方も少なくありませんが、それはそのプレーの淡白さを補うためでもあります。  

「スネーク・バイブレイト」といって

ヘビのように2か所で振動するシャフトもあった

一方でポケット・ビリヤードのキューは、昔は柔らかいものが主流でした。

たとえるなら、キューのたわみでボールを捕まえて、棒高跳びのようにポーンとボールを押し出せるようなものです。

また、「スネーク・バイブレイト」といって、ヘビのように2か所で振動するシャフトもありました。

その当時は「ローテーション」がゲームの主流で、これは15個のボールを使用しますから、ラックはナインボールよりも大きいです。

しかも昔は、ブレイク・キューがなく、プレー・キューでブレイク・ショットを行っていました。

ですからラックを効率よく割るためには、キューのしなりを利用する必要もあったのです。

加えてポケット・ビリヤードは、キャロム・ビリヤードよりもボールが小さくてキュー先の径が大きいですから、元からしてキャロム・ビリヤードのキューほどには剛直でなくてもよかったのです。

しかしながら最近では、ナインボールやテンボール以外のゲームがプレーされることがほとんどなくなりましたし、ブレイク・キューもできました。

そのため、そうした性能としての柔らかさが求められなくなりつつあります。

ナインボールは、キャロム・ビリヤードの種目と違って、中心に近い撞点、縦の変化と少しのヒネリだけでこなすことができます。

実際、ナインボールの試合を1時間見ていても、ハードショットを見ることは少ないです。

フィリピンや台湾のプレイヤーですと、ギューンと引いたりヒネリを強く効かせりしたショットを見ることがありますが、おしなべて多くのプレイヤーは、キューに負担がかからないようなショットをしています。

ですから今のポケット・ビリヤードのキューは、どちらかというと「中ぐらいのバット+硬めのシャフト」という組み合わせで作られているものが多く、そういうキューが信頼性が高いと考える人も多いのではないでしょうか。言い方を変えると、狭い撞点を正確に撞くことに特化したキューといえます。 

ゴルフのバンカーショットは

どんなに頑張っても200ヤードは跳ばない

さて、自分に合ったバットとシャフトの組み合わせがわかると、次の段階として「どんな硬さのタップを使うか」という話に入っていきます。

硬すぎず柔らかすぎない中庸のキューであれば、大体が「M」で対応できると思います。

でも、硬さを中和させることを目的として、硬いキューに柔らかいタップをつけることは、あまりオススメできません。

もちろん、ショットしたときに「キンキン」いうぐらい硬いキューに柔らかいタップをつけることは、救いになるとは思います。

でもタップの作り手としては、硬いキューであってもしっかりした感触があるMぐらいの硬さのタップをつけることをオススメします。

特に、あまりパワーがない人が硬めのタップを使うと、イキイキしたショットができるようになると思います。

「硬いキュー+柔らかいタップ」の組み合わせよりもオススメできないのは、「柔らかいキュー+柔らかいタップ」というチョイスです。

この組み合わせですとパワーをロスしやすく、ショットがボケてしまいます。

ゴルフのバンカーショットは、砂を噛んでいますから、どんなに頑張っても200ヤードは跳びません。

それと同じで柔らかいタップですと、ヒットした瞬間にパワーロスが起きやすいのです。

それに対してMやQのようなしっかりしたタップですと、硬いけれども弾力があります。

ですから、入ってくるパワーを減衰させませんし、受け止めすぎることもありません。

野球でも、硬球と軟球を同じバットで打つと、硬球のほうが跳びます。

それと同じことです。

ゴルフのバンカーショットは

どんなに頑張っても200ヤードは跳ばない

さて、自分に合ったバットとシャフトの組み合わせがわかると、次の段階として「どんな硬さのタップを使うか」という話に入っていきます。

硬すぎず柔らかすぎない中庸のキューであれば、大体が「M」で対応できると思います。

でも、硬さを中和させることを目的として、硬いキューに柔らかいタップをつけることは、あまりオススメできません。

もちろん、ショットしたときに「キンキン」いうぐらい硬いキューに柔らかいタップをつけることは、救いになるとは思います。

でもタップの作り手としては、硬いキューであってもしっかりした感触があるMぐらいの硬さのタップをつけることをオススメします。

特に、あまりパワーがない人が硬めのタップを使うと、イキイキしたショットができるようになると思います。

「硬いキュー+柔らかいタップ」の組み合わせよりもオススメできないのは、「柔らかいキュー+柔らかいタップ」というチョイスです。

この組み合わせですとパワーをロスしやすく、ショットがボケてしまいます。

ゴルフのバンカーショットは、砂を噛んでいますから、どんなに頑張っても200ヤードは跳びません。

それと同じで柔らかいタップですと、ヒットした瞬間にパワーロスが起きやすいのです。

それに対してMやQのようなしっかりしたタップですと、硬いけれども弾力があります。

ですから、入ってくるパワーを減衰させませんし、受け止めすぎることもありません。

野球でも、硬球と軟球を同じバットで打つと、硬球のほうが跳びます。

それと同じことです。

ゴルフのバンカーショットは

どんなに頑張っても200ヤードは跳ばない

さて、自分に合ったバットとシャフトの組み合わせがわかると、次の段階として「どんな硬さのタップを使うか」という話に入っていきます。

硬すぎず柔らかすぎない中庸のキューであれば、大体が「M」で対応できると思います。

でも、硬さを中和させることを目的として、硬いキューに柔らかいタップをつけることは、あまりオススメできません。

もちろん、ショットしたときに「キンキン」いうぐらい硬いキューに柔らかいタップをつけることは、救いになるとは思います。

でもタップの作り手としては、硬いキューであってもしっかりした感触があるMぐらいの硬さのタップをつけることをオススメします。

特に、あまりパワーがない人が硬めのタップを使うと、イキイキしたショットができるようになると思います。

「硬いキュー+柔らかいタップ」の組み合わせよりもオススメできないのは、「柔らかいキュー+柔らかいタップ」というチョイスです。

この組み合わせですとパワーをロスしやすく、ショットがボケてしまいます。

ゴルフのバンカーショットは、砂を噛んでいますから、どんなに頑張っても200ヤードは跳びません。

それと同じで柔らかいタップですと、ヒットした瞬間にパワーロスが起きやすいのです。

それに対してMやQのようなしっかりしたタップですと、硬いけれども弾力があります。

ですから、入ってくるパワーを減衰させませんし、受け止めすぎることもありません。

野球でも、硬球と軟球を同じバットで打つと、硬球のほうが跳びます。

それと同じことです。

タップでパワーを殺してしまうのは、もったいないと思います。

皮のしっかりした部分を使いながら

柔らかいタップを作ることは難しいこと

実際に世界的にみても、Mが一番多く使われているのは当然として、SとQの使用者数を比べると、地域によって異なるものの、概してQのほうが多いです。

ただ、だからといって、Sがオススメできないということではありません。

Sをオススメするのは、キューを握らずにブランコのようにスイングさせてショットする方です。

そうしたストロークの場合、ボールをしっかりと捕まえることが難しく、かつタップと十分に密着しないままボールが跳び出していきやすいです。

ですから、Sのような柔らかいタップを使って、ボールを捕まえやすくするといいと思います。

ちなみに弊社がタップを製作するまでは、SやQのような「硬さの種類」というものは存在しませんでした。

さらにいうと、Sのような柔らかいタップを長い期間にわたって作り続けることができたメーカーもなかったのです。

昔でもタップに求められたのは、ショットしたときの感触の良さなどの前に、まず「壊れない」ことでした。

そのためには、皮のふかふかした部分ではなく、しっかりした部分を使わなければなりません。

でも、皮のしっかりした部分を使いながら柔らかいタップを作ることは、難しいことです。

プレスしなければ作ることは可能ですが、それでも柔らかいのは最初だけで、使っているうちにどんどん硬くなったり、膨らんだりしてしまいます。

つまり長い間、柔らかさを保つことはできませんから、品質が安定しませんし、頻繁に交換する必要も出てきます。

こうした面からみても、柔らかくて安定したタップは、積層構造でしか作ることが難しいのです。

宮本武蔵は巌流島で

本当なら自分が気に入った刀で佐々木小次郎と戦いたかった

道具選びは「武器選び」です。

「このタイプのキューだとあの手のショットが有利になる」「前のキューはこういう重さ・テーパーだったから次はこういうキューにしてみよう」といったことを考えて、「自分なりの公約数を出す」ということが「道具を選ぶ」ということなのだと思います。

そしてざっくりした言い方をすると、同じ練習量であれば、「道具は武器」と考えて道具を選んでいる人が勝つと思います。

宮本武蔵は巌流島で、本当なら自分が気に入った刀で佐々木小次郎と戦いたかったのかもしれません。

でも、「絶対に勝つためには小次郎の刀が届かない道具が必要だ」ということで櫂(かい)を選んだのではないでしょうか。

見栄を捨てて戦ったことがスゴイと思いますし、ビリヤードの道具選びにしてもそれに通じる部分があると思います。

デザインやショットしたときの感触がお気に入りのキューを使えば、気持ちよくプレーできると思います。

でも、充実したプレーになっているかというと、それはまた別の話です。

最終的には皆、気持ち良くプレーできるよりもアベレージを上げたいでしょうし、うまくなりたいはずです。

もちろん、道具に頼りきるのではなく、苦手なショットをトレーニングで克服することも必要ですが、そうして自分にとって武器になる道具を探して、選ぶようにするのがいいと思います。

2014年10月5日  Written by.Hideo Moori

第3回エッセイ – 3rd プレーとタップの硬さについて

弾力の質や繊維の密度を加味して、

トータルバランスが良くなるように製作

今回は、ビリヤードの「プレー」「試合の勝率」「プレッシャー」とタップの「硬さ」の関係などについてお話しします。 

タップの「硬い」「柔らかい」という言葉には、単に硬さだけでなく、固定観念や先入観が含まれていることが多いように思います。「硬いタップはボールを捕まえにくい」「柔らかいタップはスリップしにくい」というようなものです。 

でも、一口に「硬さ」といってもいろいろあって、たとえば「硬い」には、鉄のようにまったく弾力を感じないものがあれば、木のように少しだけ柔らかさが感じられるものもあります。 「柔らかい」にしても、空気がいっぱい入ってフカフカしているものと、ネチャッとしたお餅のようなものもあります。

また、同じネチャッでも、パフッと力が抜けるような柔らかさと、ねっとりとした柔らかさでは、感触がまったく違います。 ですから、タップの硬さを表現するときには、何かしらのエッセンスを加えて表現したほうがよいと思います。

単に「僕は硬い(または柔らかい)タップが好き」というのではなく、「硬いけど『クッ』と食いつく」「柔らかいけど型くずれしない」「硬くても金属音がしない」「柔らかいのにつぶれていかない」というようにです。 タップの製作者という立場でもう少しいうと、タップ製作において弊社では、硬さのセッティングだけをして製作しているのではありません。

弾力の質や繊維の密度を加味して、トータルバランスが良くなるように考えて製作しています。 それもあって弊社では、タップの種類の表現を「ハード(H)」「ソフト(S)」から「クイック(Q)」「スロウ(S)」というレスポンス・スピード――タップがボールを捕えてから離すまでの速さ(時間)――に変更しました(中間のミディアム(M)もあります)。

ハードやソフトということは、あえていわなくても多くの方にご理解いただけることです。ですからそれを省略し、硬さにレスポンス・スピードという要素を加えて、「ハード&クイック(またはソフト&スロウ)という性質があるタップ」ということにしたのです。

タップを少し硬めのものに変えるだけで、

すごく楽に引けるようになる

ここまでの話は、タップに限ったことではありません。キューでいえば、たとえばシャフトのしなり具合は、テーパーによって変わります。また、キューやタップが硬かったとしても、握り方を変えるだけで感触が違ってきます。同じキューでも、軽く握ればますます硬く感じますし、強めにギューッと握ると感触が若干マイルドになるのです。

ですからキューにしても、硬さなどを単に「硬い」「柔らかい」という言葉だけで表現し切るのは難しいと思います。 こうしたことからしても、自分にマッチするキューを選ぶには、デザインだけをみるのではなく、自分の体格やストローク、プレースタイルなどを含めて総合的に考えるとよいのではないでしょうか。

たとえば、腕力が弱くてストロークも小さい方の場合、パワー不足を補うにはキュースピードを上げる必要が出てきます。そのため、キューを選ぶ際には、キュースピードを上げやすいテーパーや重さのキューを選ぶのがよいと思います。 また、プロ選手はキューの重心の位置などをかなり細かく気にします。ですから、自分と似た体格のプロ選手が使っているキューがどのような性能をもっているかを知ることは、キュー選びの一つの指標になるでしょう。 

そして、デザインだけでなく、そうした性能も加味してキューを選んだときに初めて、そのキューにはどういう硬度や性質のあるタップを装着すべきかがみえてくると思います。弊社が3種類のタップを製作しているのは、その段階でご自分に合ったものを選んでいただくためでもあるのです。

 昔と違って今では、カスタムキューも購入しやすくなっています。ですから、ゆくゆくは自分にピッタリのキューをオーダーメイドし、それに見合ったタップを選ぶ――。その道筋ができたときに、プレーと道具の関係もまた、より自然にマッチすることと思います。 

漠然と好みだけで選んでいたところからもう少し深く、自分のプレーの精度を上げるにはどんな道具が必要なのかを考えてみてはいかがでしょうか。いいプレーをするために「道具を選ぶ」ということです。もちろん、いいプレーをするにはトレーニングも必要になります。

でも実際、道具をホンの少し変えるだけで、苦手なショットを克服できることもあるのです。 たとえば、「押し球はギュンと押せるけど、引き球はボケる」という場合、柔らかいタップを使っていることが多いです。もちろん、柔らかいタップでも、長いストロークでキューを上手く出せば、きれいに引く(ボールにバックスピンをかけて手前に戻す)ことができます。でも、タップを少し硬めのものに変えると、それだけですごく楽に引けるようになるのです。

統計的に、若干硬めのタップを

使っている方のほうが勝率が高い

試合の勝率とタップの硬さにも関係があります。

日本のスリークッション・シーンに関していうと、柔らかいタップを使っている方よりも若干硬めのタップを使っている方のほうが、統計的にみて勝率が高いのです。

また、世界的にも、(キャロムの)チャンピオンになるようなプレイヤーがフカフカのタップを使っているという話はあまり聞いたことがありません。

この理由は、テーブル・コンディションにあります。

トーナメント序盤戦のテーブル・コンディションは、ドライで軽いのですが、そうした状態では、柔らかめのタップのほうが安心感があります。
ショットした瞬間にボールがスリップして逃げていくようなところで、柔らかめのタップはクイッと呼び戻すような動きをするためです。

ところが、テーブル・コンディションはトーナメントが進むにつれて、ウエットで重たくなっていきます。
そうなった場合に柔らかいタップでは、ヒネリを効かせたときにボールを引っ張りすぎるミスが起きてきます。

緊張して若干ストロークが弱かったときには余計にです。
つまり、柔らかいタップは、朝一番のツルツルしたドライで軽いコンディションのときには気持ちよく使えるのですが、勝ち進んでいくと難しい操作を要求されるのです。

逆に硬めのタップは、トーナメントの佳境、つまりウエットで重いコンディションになったときにいい状態になります。

ですから統計的に、若干硬めのタップを使っている方のほうが、トーナメントにおいては勝率が高いのです。

かくいう毛利自身も、かつては柔らかめのタップが好きな若手プレイヤーでした。

ですが、経験を積むにつれて試合前には、タップを薄くして若干硬めにするようになりました。
厚すぎたり柔らかすぎたりするタップでは、本番の試合、特に緊張する場面で不安になるとわかったためです。

ですからこのことは、身をもって知っていることでもあるのですが、道具にはそれだけ結果を左右してしまう面があるのです。

道具のちょっとした変化によって

プレーにも違いが出てくる

タップの硬さによってプレッシャーを克服できることもあります。

自分に合わない硬さのタップを使っていると、知らず知らずのうちにボールコントロールを難しくしてしまっている可能性があるのです。

透明な気持ちでボールに迎えていないといえばいいのでしょうか。

タップの嫌な感触によってどこか違和感を感じながらプレーしているものですから、本来なら怖がる必要がないショットまで怖がってしまうことがあるのです。

プロ選手は、道具の感触などから「このキューだと、こういうショットが難しいかな」「あの手のショットはこんな風に撞けるかも」ということを想像することができます。

アマチュアの方がその域に達するには年月がかかりますが、ここまでの話にあったように、道具のちょっとした変化によってプレーにも違いが出てきます。

このことをいつも頭の中に入れておき、上級者のプレーを見るときには、プレーレベルやトレーニング量が違うということだけでなく、自分とその人とでは道具そのものにも違いがあるかもしれないと思って見てみてはいかがでしょうか。

毛利の独り言Vol.2- 一枚革について

2nd 「一枚革について」

ブルー系の革は「クローム鞣し」、

茶色のタップは「ベジタブルタンニン鞣し」

今回は、古くからある「一枚革(単板)タップ」や「鞣し(なめし)」などについてお話しします。

タップの研究・開発をしていくなかで弊社では、前回お話ししましたように、ある意味必然的に「積層」という答えに辿り着きました。

しかしながら、だからといって「タップは積層でなければダメ」ということでありません。

古くから多くのビリヤードファンに向けてタップを供給し続けてきた、単板タップ・メーカーの功績は、ビリヤード業界においてとても大きいと思っています。

いわゆる「ブルー系」といわれる青いタップを、よく「一枚革」とは別に「ファイバー」と区分けされることがあります。

でもこれは間違いです。

実はこれらも茶色のタップと同じ一枚革で、それらと異なるのは鞣し方なのです。

皮を「溶けない・腐らないもの」に作り替える作業を「鞣し」といいますが、ブルー系の革は「クローム鞣し」で作られています。

一方、茶色のタップには、「ベジタブルタンニン鞣し」の革がよく使われています。

ですから、それぞれを区分けする場合は、「クローム系」「ベジタブルタンニン系」と呼ぶのが正しいです。

ちなみに弊社では、ベジタブルタンニン鞣しの革を使用しています。

丈夫なのはもちろんのこと、

軽く仕上がるのもクローム鞣しの特徴の一つ

ところで、人間がなぜ皮を鞣す方法を知ったかというと、こんな面白い話があります。

昔々のある時、牛が肥溜めに落ちて溺れ死にました。

でも、死んだ牛を引き上げるのが面倒なのでそのままにしていました。

そしてだいぶ長い時間が経ってから、皮を剥いで洗って利用しようとその牛を引き上げたところ、野生の皮を揉むなどして作った今までの革と比べて、ものすごく丈夫な革に仕上がっていました。

そこで「なぜそんな丈夫な革ができたのか」の理由を探ったところ、動物の糞のなかにあった餌(植物)の食べかすや草の汁などと、動物そのものがもっている物質が化学反応を起こして、生皮が鞣し革に変わったことを発見したのでした。

それがベジタブルタンニン鞣しの元祖です。

そこからいろいろな鞣し方が研究されて、中世ではよりいい革が作られるようになりました。

その後19世紀の中ごろになると、ドイツ人の科学者が「ベジタブルタンニン鞣しはくさいし手間がかかるし、若干重たくもなる。もっと科学的な薬品で鞣しができないものか」と考え、研究を始めました。

その末に発明されたのがクローム鞣しです。

これが画期的で、丈夫なのはもちろんのこと、軽く仕上がるのも特徴の一つです。

それに、タップを見てわかるようにベジタブルタンニン鞣しでは、濃い茶色に仕上がるので色をつけにくいのですが、クローム鞣しは薄い色で仕上がります。

ですから、ブルー系のように染色しやすいのです。

そうした利点があったためにクローム鞣しは、あっという間にベジタブルタンニン鞣しを追いやって世界中に広まりました。

今ではおそらく、95%以上の革がクローム鞣しで作られていると思います。

アルファ波が出そうな乾いた感じの

「スコーンッ」ていう雑音のない音がした

ところで、ゴルフクラブのウッドのヘッドには、素材として今はチタンなどが使われていますが、昔はもちろん木で、一番適していたのはパーシモン(柿)でした。

でも、パーシモンの木ばかりをたくさん切るわけにはいかず、その内にあまりいい素材が手に入らなくなったことで、合板(積層)のヘッドができました。

このことは、弊社が積層タップを作るうえでの一つのヒントになったことでもありますが、ずっとパーシモンを使ってきた人が合板を使った時に何を嘆いたかというと、それは音です。

「カキーンッ」といい音をしていたのが、合板にしたことで「ゲチャッ」という音になったのでした。

それはタップでも同じことがいえて、肉でいうヒレやサーロインのような良質な単板の革で作られたタップをいい感じに締めて撞くと、アルファ波が出そうな心地いい音、乾いた感じの「スコーンッ」という雑音のない音がしました。

でも積層タップでその音を出すのは、どうしてもプラスティック(接着剤)の音が混ざるために難しいのです。

弊社の開発当初のタップも、撞いた時に若干雑音が目立ち、それが嫌だという方がいましたが、それもそのことが理由です。

今のタップに関しては、研究が進んだことで音が嫌だといわれることは少なくなりましたが、これは今でも課題の一つといえます。

タップを試作していたころに探していた革は、

闘牛用の牛

もしも今、単板のいい革を手に入れることができるとしたら、過去にあった良質な単板のタップを超える自信があります。

それというのも、タップを試作していころに探していた革は、闘牛用の牛です。

体重が1トンもあると、大きく育って筋肉を使っているから皮もものすごく強くて、腰回りの部分になると特に強いのです。

そうしたら今から17、18年ぐらい前でしょうか。

まさに「これ!」という絶品な革が2頭分だけ送られてきたことがありました。

そこでその革を使って早速、数百個のタップを作ったところ、過去にあった高級品と同等か、それ以上の高い品質のものに仕上がりました。

試してくれたプロ選手がみんな「最高」と口をそろえるぐらいのものです。

でも、前回もお話ししましたが、その革は「あることはある」というレベルで、もう入荷することはありませんでした。

つまり、良質なタップを作れる技術はありましたが、材料がないために作りたくても作れなかったのです。

これからもそこまでの革に巡り会えることは少ないでしょうし、安定供給されるまでになると尚更だと思います。

そういう意味でも単板のタップ独特の良さを味わえる機会が、ごくごくまれになってしまったわけで、そのことは残念に思います。

2014年9月4日 Written by. Hideo Moori

第1回エッセイ – 積層について

呼ばれ方は3種類。

「マルチレイヤード」「ラミネート」、そして「モーリ・スタイル」


今回は、弊社がタップ開発を行うなかで、「積層」にたどり着いた理由についてお話しします。

モーリタップは「積層タップ」のオリジナルですが、タップを指して「積層構造」ということを最初に言ったのは、実は弊社ではありません。

「モーリタップ=積層」となったのは、アメリカのプレイヤーがモーリタップを見たときにそう呼んだことが始まりなのです。

呼ばれ方は3種類ありました。

「マルチレイヤード」「ラミネート」、そして「モーリ・スタイル」です。

これらのうちのモーリ・スタイルという言葉は、その後、タップの枠を越えて「製法の一つ」として使われるようにもなりました。

それまで単板や単一素材で作られていたものを、複数の素材を貼り合わせて作ったときなどに「それはモーリ・スタイルだね」と言うことが流行った時期があったとさえ聞いています。

「厚いタップ=いいタップ」。

嵩を上げて厚いタップを作ることが絶対条件

ただ、弊社では、タップを開発し始めた当初から積層にしようと考えていたのではありません。

タップの開発を始めたのは今から30年くらい前のことで、材料となる革を探したところ、薄いけど質のいい革であれば安定して仕入れられるものを見つけることができました。

でも、そのころの先角の素材は、象牙やシャチの歯が主流で、それらは「目」があるためにタップが薄いと割れてしまうこともありました。

ですから当時は、「タップが厚ければ先角が割れる心配が少ない」ということなどから、「厚いタップ=いいタップ」と考えられていました。

つまり、プレイヤーに受け入れてもらうには、嵩を上げて厚いタップを作ることが絶対条件だったのです。

「薄いけど質はいいですよ」では認められませんし、プレイヤーが不満に思っている薄い単板の焼き直し版を作ったところで売れないのは明白でした。

そこでその革は諦めて、別の革を探しました。

ところが、単板で使えるくらいの厚さがある革となると、あるにはありましたが、安定して仕入れられるものとまでになると、いくら探してもどこにも見当たりませんでした。

それもそのはずです。

その当時、高級なタップは、フランスから大体1年に1回くらい入荷していたのですが、前の年に入荷したタップと今年入荷したタップとでは、同じメーカーでも全然違いました。

品質がどんどん落ちていて、革も目に見えて薄くなっていたのです。

フランスで100年もの歴史あるメーカーですら厚い革を仕入れられなくなっているのに、タップに適した良質で厚い革が市場に出回るはずがありませんでした。

一方、単に嵩を上げるだけの話なら、昔からある「座(※1)」を使う方法もありました。

先角の上に座を取りつけて高さを稼ぐのです。

でも、フランスの老舗メーカーでさえ薄い単板のタップしか作れなくなったなかで、それと同じように日本で買える限られた薄い革を使って単板のタップを作って、そこに座をつけて「これでいかがですか?」といっても認められるはずがありません。

ちなみにこういうことを考えているころから、タップ作りが趣味ではなくなりました。

「どこかに商品価値をつけないと競争には勝てないし、ガレッジワークで終わってしまうな」と感じるようになりました。

「薄い革を上手に張り合わせることができれば

 無限に厚くすることができる」

さて、いくら頑張っても、当時の「いいタップ」の条件である「6ミリ以上の厚さ」がある牛の原皮をコンスタントに買うことはできません。

一方で、薄いけど質のいい革なら手に入れられます。

でも厚さがないといいタップとは認められません。

難題に対して考えた末にふと思いつきました。

「薄い革を貼り合わせてみてはどうか。上手に張り合わせることができれば無限に厚くすることができる」。

そこで最初は、薄い上質な牛革を仕入れて貼り合わせてみました。

ところが牛の皮というのは、あの厚みがあるから強いのであって、スライスして薄くするとすごく弱いのです。

そのため接着はできましたが、ボールを撞いてみると繊維がすぐに切れて「カキンッ」と壊れてしまいました。

革の本にも書いてありますが、皮の繊維の絡み方は「三次元編み目構造」といって厚みが倍になると強度は4倍にも5倍にもなります。

でも逆に、一体になっている繊維をブツッと切ってしまうと、強度が著しく落ちてしまうのです。

これは牛以外の強くて厚い皮をもっている動物、たとえば象とか熊も同じです。

そこで「元々皮膚が薄くて、かつ強い動物はいないのかな」と考えました。

そうしたらいました。

それが豚なのです。

豚は皮下脂肪が多く、その皮は、厚い脂肪の外側にせいぜい2ミリくらいあるだけです。

その2ミリの皮を平滑にするためにスライスすると、最大でも1ミリしか残らないのですが、豚の皮は元々薄くて強く、そのため表面を平滑にした程度であれば繊維の分断が最小限に抑えられ、強度もほとんど変化しませんでした。

そこでモーリタップの素材には、薄くても抜群に強い豚革を使うことにしました。

「もっと高次元のところで品質をそろえれば、

 今の単価の何倍でも買ってもらえるはず」

ところで昔のタップは1箱50個入りが普通で、品質にバラツキがあるのも当たり前でした。

それがわかっているのでプレイヤーは、1箱のなかからいいタップだけを自分で選んで買いたいところですが、売る側からすると、いいタップだけを持っていかれて品質が良くないタップだけが残っても困ります。

当時、タップはビリヤード場で買って店員さんに取りつけてもらうのが一般的でした。

ですからビリヤード場は、タップを1箱買って「上手い人用のAランク」「そこそこの人用のBランク」「貸しキュー用のCランク」とタップを選別して販売していたものでした。

また、個人で1箱買って、Aランクだけを自分で取って、それ以外をほかの人に売る人もいました。

ただ、箱の中身にバラツキがあるだけでなく、箱によってもバラツキがありました。

そのため、当たりが多い箱を買えば得した気になるし、一方でBランクしか入っていない箱だと高いものを買った気になったものでした。

そういうわけでプロ選手を含む多くの上級者は、こんなことを考えていました。

「いいものなら高くても買うから選ばせてほしい」。

「1,000円でも2,000円でも出すから高級品がほしい」。

つまり「いいものを安く売ってほしい」という考えはなかったのです。

ちなみに当時のタップ単価は、小売りで100~300円くらいで、400円くらい出せば相当いいタップを買うことができました。

そんな状況を見ていて「そこだ」と思いました。

いいタップがほしいがために、タップ単価の何倍ものお金を出して1箱買う人がいるということは、「もっと高次元のところで品質をそろえれば、今の単価の何倍でも買ってもらえるはず」と考えたのです。

でも、いくら良質で厚い革を手に入れられたとしても、1枚のなかには肉でいうヒレもあればサーロインもあり、それを使ってタップを作ったのでは品質を安定させることはできません。

つまり品質をそろえて当たり外れをなくすためには、牛の単板ではダメなのです。

それで「これはもう積層しかあり得ない」と考えました。

このようにモーリタップを積層にした理由は2つあります。

厚みを作ることが一つ。

そして、品質を安定させることがもう一つです。

これが積層の存在意義であり、こうして積層タップ「モーリタップ」が誕生したのでした。

※1:先角を保護するためにタップと先角の間に取りつけられるパーツ。

    紙やニカワで固めた薄い革を圧縮して作られる

2014年 8月16日 Written by.Hideo Moori

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